ネット上には「嘘を見抜く裏技」と称する情報が溢れていますが、その多くには科学的根拠が乏しく、重大な誤解を招く危険があります。
最たる例が「右上を見たら嘘、左上を見たら真実を思い出している」という俗説です。これは過去の神経言語プログラミング(NLP)の仮説が一人歩きしたものですが、近年の多数の実験心理学研究によって「視線の方向と虚偽の間に一貫した相関関係はない」ことが証明されています。視線の動きは単に脳が記憶を検索する際の個人差に過ぎません。
また、「腕組みや鼻を触る仕草=嘘をついている」と短絡的に決めつけるのも危険です。室温が低い、花粉症である、単にリラックスしているなど、文脈を無視した身体言語の解釈は冤罪を生む元凶となります。真実を見極める唯一の基準は、何気ない雑談時の「普段の状態(ベースライン)」を把握し、特定の話題を振った際にそこからどれだけ逸脱した反応を示すかという相対的な変化の観察にあります。