大阪でてっちりが安く提供できる最大の理由は、圧倒的な市場規模と独自の流通エコシステムにあります。水産庁や大阪市中央卸売市場の取引統計によると、日本全国で消費される食用ふぐの約6割が大阪を中心とする関西圏で消費されています。この桁違いの需要があるからこそ、産地である長崎県や熊本県、愛媛県などの主要養殖場から毎日大量のとらふぐが生きたまま直送され、輸送コストを極限まで圧縮できるスケールメリットが働いています。
さらに、大阪のふぐ食文化を支えているのが「身欠き(みがき)」と呼ばれる高度な分業システムです。有毒部位を除去する免許を持つ専門職人が市場の加工拠点で一括して下処理を行い、安全な可食部のみを飲食店へ迅速に配送します。これにより、個々の店舗で専任のふぐ処理師を常駐させる人件費を抑えられ、厨房オペレーションを効率化できるため、結果として大阪のふぐコース激安の理由が構造的に成り立っています。
歴史的にも、豊臣秀吉の「河豚食禁止令」時代から大阪の人々はふぐを「当たれば死ぬ=鉄砲(てっぽう)」と隠語で呼び、鉄砲鍋が転じて「てっちり」、刺身を「てっさ」と親しんできました。危険を冒してでも美味いものを安く喰らうという合理主義と「始末の精神」が、現代の驚異的な価格破壊チェーンや老舗の企業努力にそのまま受け継がれています。