司法の島エニエス・ロビーの対峙シーンにおいて、物語のボルテックスは最高潮を迎えます。裁判所の屋上に並び立つ麦わらの一味に対し、対岸の司法の塔に囚われたロビンは「もう死にたい」と拒絶の言葉をぶつけます。世界政府という巨大すぎる敵の前に、仲間がやがて自分を疎ましく思い、見捨てる日が来ることを誰よりも恐れていたからです。
その絶望を打ち砕いたのが、モンキー・D・ルフィの常識外れの決断でした。ルフィは敵の正体を理解した上で、一切の躊躇なく横に立つ狙撃手に命じます。
「そげキング、あの旗撃ち抜け」
そげキングが放った大型パチンコ・カブトによる「火の鳥星(ファイアバードスター)」は、世界170カ国以上の結束を象徴する世界政府の旗を紅蓮の炎で焼き尽くしました。これは文字通り、世界そのものを敵に回すという実力行使の「宣戦布告」です。
「お前が世界に怯えているなら、俺たちがその世界と戦ってやる」――言葉ではなく行動で示された絶対的な覚悟を前に、ロビンが20年間固く閉ざしていた心の防壁は完全に決壊します。そして、溢れ出る大粒の涙とともに、絞り出すように放たれたのが伝説のセリフです。
「生ぎたいっ!!!! …私も一緒に 海へ連れてって!!!」
自己否定の呪縛から解き放たれ、他者に助けを求めることを自分に許した瞬間でした。