ネット上の言説においてしばしば見受けられるのが、「AKB48の楽曲は特典(握手券や投票券)目当てで買われていただけではないか」という極端な言説です。しかし、この見方は楽曲自体の音楽的評価と文化史的価値を見誤っています。
現場の実態を振り返ると、CDの販売戦略とクリエイティブの制作現場は完全に一線を画していました。秋元康をはじめとする制作陣は、井上ヨシマサ、織田哲郎、多田慎也、伊藤心太郎といった日本のポップス界屈指のメロディメーカーを起用し、70〜80年代の歌謡曲、90年代のビーイング系ポップス、ユーロビート、本格的ロックなど多彩なジャンルを融合させていました。
また、「シングル表題曲だけを聴いてグループを評価する」ことも大きな盲点です。オリコン1位を獲得したヒット曲群が「大衆向けのアイコン」であるならば、カップリングや劇場公演曲は「少女たちの生身のドキュメンタリー」として設計されていました。両者を併せて鑑賞して初めて、AKB48というプロジェクトの全貌が理解できる構造になっています。