かつて若いファミリー層で賑わった多摩の街並みは今、全国平均を上回るスピードで高齢単身世帯の集積地へと変貌した。救急搬送される患者の過半数が75歳以上の後期高齢者という現実は、医療のあり方そのものを根底から揺さぶっている。
心不全の急性増悪で運ばれてきた高齢患者の処置を終えても、話はそこで終わらない。独居で認知症を患い、退院後の服薬管理や食事の確保すら覚束ないケースが日常茶飯事だからだ。急性期の治療を終えた瞬間に「生活の崩壊」という次なる問題が立ち塞がる。病気を治すだけの医療では、もはや地域を支えきれない。医療ソーシャルワーカーやケアマネジャーが救急現場と即座に情報共有を行う光景は、この街特有の日常風景となっている。