連載完結から20年近くが経過した現在も、ネットコミュニティや考察ブログ、SNS上では「弥海砂は本当に不幸だったのか」という議論が絶えません。
読者の声を検証すると、意見は大きく二分されています。一方は「月のサイコパス性に翻弄され、寿命も心も吸い尽くされた最大の被害者」とする同情論です。両親の仇を討ってくれた恩人とはいえ、自分を駒としか見ていない男に全てを捧げ、記憶を消された末に孤独死した結末はあまりに救いがありません。
しかし他方で根強く主張されているのが、「ミサ本人は最後まで幸せだったのではないか」という幸福論です。海砂自身は作中で「月に利用されてもいい」「世界一愛する人の力になれることが自分の生きがい」と断言していました。他者から見ればどれほど歪で残酷な搾取関係であっても、当人にとっては「狂おしいほど愛する対象を見つけ、そのために命を燃やし尽くした人生」であったという見方です。この多面的な解釈ができる点こそ、小畑健氏の美麗な筆致と大場つぐみ氏の精緻な心理描写が生み出した『デスノート』の底知れない魅力と言えます。