「毎日何回も目薬をさしているのに、一向にドライアイ目薬で治らない理由は何なのか」という疑問は、臨床現場でも極めて頻繁に遭遇する訴えです。ネット上では「より強力な市販最強の目薬を探すべき」という短絡的な言説も見られますが、実際には目薬の「使い方そのもの」に根本的な過ちがあるケースが少なくありません。
最大の落とし穴が、ドライアイ目薬のさしすぎによる注意点です。本来、人間の瞳は涙腺から分泌される涙の中に、抗菌作用を持つリゾチームやラクトフェリン、ビタミンA、上皮成長因子(EGF)など、角膜を保護する貴重な生体成分を豊富に含んでいます。目薬を1日に10回、20回と過剰に点眼すると、これらの有益な生体成分をすべて洗い流してしまう「ウォッシュアウト現象」が発生します。
さらに、防腐剤入りの目薬を過剰点眼した場合、防腐剤成分が角膜表面のバリア機能を破壊し、薬剤誘発性の角膜びらんを引き起こします。「乾くから点眼する」→「防腐剤と涙の流失で角膜が傷つく」→「刺激でさらに乾燥感を感じる」という深刻な悪循環に陥るのです。
もう一つの重大な盲点が、「マイボーム腺機能不全(MGD)」の見落としです。まぶたの縁にあるマイボーム腺が詰まり、涙の蒸発を防ぐ油分が分泌されなくなると、いくら水分を目薬で補給しても数秒で蒸発してしまいます。この場合、目薬を増やすのではなく、まぶたを温める「温罨法(おんあんぽう)」や専用シャンプーでの眼瞼清掃を行わなければ、根本的な改善は望めません。