顔面神経麻痺の予後を決定づける最大の要素は、「発症後72時間(3日)以内」に適切な薬物治療を開始できるかどうかにあります。神経が浮腫によって完全に締め付けられ、軸索が変性・断裂してしまう前に強力な抗炎症治療を行う必要があるためです。
以下のような兆候が1つでも当てはまる場合、単なる疲労と軽視せず、即日耳鼻咽喉科または脳神経内科を受診してください。
- 顔のセルフチェック1:うがいをするときや水を飲むとき、片方の口角から水がツーっとこぼれる。
- 顔のセルフチェック2:目をぎゅっと閉じようとしても、片方のまぶたが完全に閉じきらず白目が見えてしまう(兎眼現象)。
- 顔のセルフチェック3:上を見上げて額にしわを寄せようとしたとき、片側にだけ横じわが入らない。
- 顔のセルフチェック4:「イー」「ウー」と口を動かした際、口角が健常な側(動く方)に極端に引っ張られて歪む。
- その他の前兆症状:麻痺が出る1〜2日前に耳の奥や後頭部にズキズキとした鈍痛がある、舌の前側で味が感じにくい、音が異常に響いて聞こえる。
臨床現場において最も警戒されるのは「脳梗塞などの脳血管障害(中枢性)」との鑑別です。簡易的な見分け方として、「額のしわ寄せができるかどうか」が挙げられます。脳からの神経伝達経路の構造上、脳梗塞による麻痺では額の動きが保たれることが多いのに対し、末梢性麻痺(ベル麻痺・ハント症候群)では額を含めた顔の半面全体が完全に麻痺します。ただし、手足の脱力やろれつが回らない症状を伴う場合は、迷わず救急搬送を要請してください。