能登屋旅館を予約する際、旅行者が最も頭を悩ませるのが「本館」と「別館」の選択です。大正浪漫の情緒を肌で感じたいのか、それとも現代的な快適性と静寂を優先するのかによって、滞在の満足度は大きく分かれます。
本館は銀山川に面しており、窓を開ければガス灯揺らめく温泉街のメインストリートを一望できます。職人の技が光る障子や欄間、飴色に磨き上げられた廊下は文化財そのものですが、エレベーターはなく階段移動が基本となり、構造上、隣室の気配や足音が響きやすい側面があります。一方の別館は山側に位置し、静かな山林を借景にした落ち着いた空間です。エレベーター完備でバリアフリー性も高く、プライベートな寛ぎを重視するシニア層や記念日旅行に適しています。
温泉設備において特筆すべきは、本館の地下にひっそりと佇む「元湯 洞窟風呂」です。創業当時の手掘りの跡が残る石段を降りると、仄暗い空間の奥に岩を削り出した湯船が現れます。硫黄の香りが漂う源泉かけ流しの湯が掛け流されており、予約不要の貸切制(内鍵をかけて利用)で愉しむ湯浴みは、まさに秘湯と呼ぶにふさわしい神秘的な体験です。加えて、温泉街を見下ろす最上階の「展望露天風呂」(※冬期は凍結・積雪防止のため閉鎖)や、広々とした男女別大浴場など、多彩な湯巡りが宿泊者を出迎えます。