現代のエンターテインメントやデジタルコマースの現場においても、「over the moon」は単なる古風な慣用句にとどまらず、強力なブランドメッセージやタイトルとして再解釈されています。
代表的な事例が、Netflixとパール・スタジオが共同製作した長編アニメーション映画『フェイフェイと月の冒険(原題:Over the Moon)』(2020年配信)です。ディズニーの伝説的アニメーターであるグレン・キーン(Glen Keane)が監督を務め、名優ジョン・チョー(John Cho)やルシー・アン・マイルズ(Ruthie Ann Miles)らが声優として参加した本作は、批評サイトRotten TomatoesやIMDbでも高い評価を獲得しました。
作中では、亡き母への思いを胸に抱いた少女フェイフェイが、伝説の月の女神・嫦娥(Chang'e)の存在を証明するために自作のロケットで月へと飛び立ちます。この作品において「Over the Moon」という言葉は、物理的に月を越える冒険劇であると同時に、深い喪失と悲嘆(grief)を乗り越え、愛の力によって前を向くという「感情の跳躍」を重ね合わせた見事なダブルミーニングとして機能しています。
さらに実業界に目を向けると、欧米でプレ花嫁・花婿から絶大な支持を集めるブライダル特化型ラグジュアリーECプラットフォーム「Over The Moon」の存在が挙げられます。公式発信情報や取材データによると、人生で最も幸福で晴れやかな瞬間である「結婚」の至福感を体現するメディア・ブランドとして名付けられ、洗練されたウェディングレジストリとして市場を牽引しています。
言葉が誕生した16世紀の童謡から現代のグローバル配信映画、そしてハイエンドなブライダルビジネスに至るまで、「月を越える」というメタファーは、時代を超えて「人生最高の瞬間」を彩る記号であり続けています。