杏の生い立ちと家族構成を振り返ると、極めて華やかでありながら、その内情は幼少期から波乱に満ちていたことが分かります。父親はハリウッドでも高い評価を受ける世界的名優の渡辺謙、実母は一般女性である由美子氏です。2歳年上の兄は、実力派バイプレイヤーとして確固たる地位を築いている俳優の渡辺大。一見すると羨望の的となるサラブレッド一家でした。
しかし、家庭環境が激変したのは杏が3歳だった1989年のことです。父・渡辺謙が映画の主演撮影中に急性骨髄性白血病を発症し、生死の境をさまよう闘病生活に入りました。過酷な闘病を支える過程で、母・由美子氏は精神的な救いを求めて新興宗教団体『釈尊会』に深く傾倒していきます。これが、後に一家を崩壊へと導く決定的な引き金となりました。
病魔を克服した渡辺謙の仕事復帰に伴い、夫婦の亀裂は修復不可能なレベルまで拡大します。決定打となったのは、両親の離婚理由と時期を巡る激しい対立でした。母側は夫の女性問題(複数の女優との不倫疑惑)を主張し、父側は妻が作った巨額の借金問題を告発。泥沼の離婚裁判へと突入し、2005年3月に正式な離婚が成立しました。
兄・渡辺大との関係は、この過酷な時期を共に耐え抜いた戦友のような深い絆で結ばれています。離婚によって両親が完全に決裂する中、兄妹はお互いを支え合い、過酷な現実へと立ち向かっていきました。