芸能界には数多くの「二世タレント」が存在しますが、父・長男・次男の3名全員が日本アカデミー賞や国内外の主要映画賞の常連としてリスペクトされているケースは極めて稀です。父である麿赤兒の遺伝子を受け継いだ兄弟のプロフィールを紐解くと、それぞれが自らの力でカルチャーの最前線を切り拓いてきた足跡が浮き彫りになります。
次男の大森南朋は、1990年代初頭からミニシアター系映画やインディーズ舞台で過酷な下積みを経験しました。転機となったのは2001年の三池崇史監督作『殺し屋1』での主演・イチ役。狂気と繊細さが同居する唯一無二の佇まいで脚光を浴び、NHK土曜ドラマ『ハゲタカ』(2007年)の主人公・鷲津政彦役でその評価を不動のものにしました。その後も大河ドラマ『龍馬伝』の武市半平太役や『どうする家康』の酒井忠次役、TBS系『私の家政夫ナギサさん』で見せたハートウォーミングな好演まで、変幻自在の演技力で日本映像界の中枢を担い続けています。
一方、長男の大森立嗣 監督は、荒戸源英監督らの現場で助監督として映画制作の過酷な現場を徹底的に叩き込まれました。2005年に『ゲルマニウムの夜』で鮮烈な長編監督デビューを飾ると、モントリオール世界映画祭審査員特別賞を受賞した『さよなら渓谷』(2013年)、興行と批評の双方で大成功を収めた『日日是好日』(2018年)、さらには『MOTHER マザー』(2026年)など、社会の深層に潜む人間の業を描く名匠として確固たる地位を築いています。