横浜第二合同庁舎を語る上で欠かせないのが、その外観に宿る歴史の記憶です。この場所はかつて、大正から昭和初期にかけて日本の基幹輸出品であった生糸の品質検査を一手に担った「旧横浜生糸検査所」の跡地にあたります。
旧生糸検査所は1926年(大正15年)に建築家・遠藤於菟(おとう)の設計によって建てられた近代建築の傑作でした。1990年代に合同庁舎へと建て替えられる際、横浜市と国は歴史的景観の継承を重視し、旧建物の赤レンガ外壁と装飾意匠を低層部に忠実に復元・保存する手法(ファサード保存・復元)を採用しました。
建築面における最大の見どころは、エントランス上部や窓枠周辺に施された重厚なテラコッタ装飾とキー・ストーン(要石)です。正面玄関の頭上には、生糸貿易の象徴である「蚕蛾(カイコガ)」と「桑の葉」をモチーフにした精緻なレリーフが刻まれており、かつて世界へ向けてシルクを送り出した横浜港の栄華を静かに物語っています。
周辺にある「旧帝蚕倉庫(現在の北仲ブリック&ホワイト周辺施設)」や「横浜市開港記念会館」「神奈川県庁本庁舎(キングの塔)」と並び、横浜の近代化産業遺産を巡る歴史散策ルートとして欠かせないスポットです。