「女性候補者が手を挙げないだけだ」「実力主義で選んだ結果に過ぎない」といった言説がネット上で散見されますが、現場を取材すればそれが極めて浅薄な認識であることがすぐに分かります。女性の政界進出を阻んでいるのは個人の意欲ではなく、極めて強固に設計された制度的・文化的な障壁です。
第1の壁は、既存政党における「現職優先と世襲優遇の公認システム」です。特に長期政権を担ってきた自民党を中心とする保守政党では、小選挙区の公認権争いにおいて「現職最優先」の原則が徹底されています。現職議員の9割近くが男性である以上、定年制や厳格な新陳代謝ルールがない限り、新人の女性が入り込む余地は物理的に存在しません。さらに、地盤(後援会)・看板(知名度)・鞄(資金)を無税に近い形で引き継ぐ世襲候補が優先される慣行が、一般の女性候補の道を固く閉ざしています。
第2の壁は、永田町の代名詞とも言える「ホモソーシャルな長時間労働慣行」です。国会審議や法案作成だけでなく、夜の会食、料亭での根回し、週末の冠婚葬祭巡りや後援会幹部との酒席が「一人前の政治活動」として評価される前近代的な慣行が色濃く残っています。家事や育児の負担が依然として女性に偏重している日本社会において、24時間365日の稼働を暗黙のうちに要求する政治家の生活様式は、優秀なキャリアを持つ女性ほど敬遠せざるを得ない構造を作り出しています。
第3の壁は、「政治資金と資金調達力の非対称性」です。国政選挙を勝ち抜くためには、公設秘書や事務所の維持費、選挙運動費用を含めて数千万円規模の資金調達が求められます。経済界や医師会、業界団体などの有力後援組織のトップの多くは中高年男性であり、既存の男性ネットワークと濃密な関係を築けない新人女性候補は、スタートラインの資金力において圧倒的なハンディキャップを背負わされています。