木村花さんが過酷なネットリンチに晒される直接の引き金となったのは、Netflixおよびフジテレビ系列で放送・配信されていた『TERRACE HOUSE TOKYO 2019-2026』第38話(2026年3月配信)における、いわゆる「コスチューム事件」でした。
問題のシーンでは、木村花さんが命の次に大切にしていたプロレスの試合用コスチュームを、同居人の男性出演者が誤って洗濯機で縮ませてしまったことを巡り、激しい口論へと発展。彼女が男性の帽子を払い落とすなど怒りを露わにする場面がショッキングに編集され、世界中へ配信されました。この放送直後から、彼女のSNSアカウント(Twitter、Instagram)には「死ね」「消えろ」「殺人鬼」「プロレス界の恥晒し」といった誹謗中傷が1日数百件から数千件規模で殺到することになります。
しかし、後に明らかになった現場の真相は、画面に映し出されたものとは大きくかけ離れていました。遺族が公表したLINEのメッセージ履歴や証言によると、制作スタッフから「もっと怒ってビンタしてほしい」「プロレスラーらしく激しく詰め寄ってくれ」といった強い煽りや演出意図の押し付けが存在していたことが判明しています。当時22歳の若きアスリートであった彼女は、番組制作側の期待に応えようとする責任感と、自身の本心との間で深い葛藤に苛まれていました。
BPO(放送人権委員会)は2026年3月、フジテレビに対して「人権侵害があったとまでは断定できないものの、放送倫理上の問題があった」とする委員会決定を通知。出演者の精神的健康を守る義務(安全配慮義務)を怠り、過激な感情表現をあえてクローズアップして配信した制作側の責任を厳しく指摘しました。