巨大な男根神輿に初嫁が跨るという強烈なインパクトから、「なぜそのような儀式が行われるのか」という疑問を抱く人は後を絶ちません。その真相は、古来より日本列島に広く分布していた民間信仰(道祖神・塞の神信仰)と農耕儀礼の融合にあります。
「ほだれ」という言葉の語源は、稲穂が豊かに実って垂れ下がる様子を意味する「穂垂れ(ほだれ)」に由来します。日本古代の農耕社会では、大地の豊かな実り(五穀豊穣)と人間の生殖(子孫繁栄・子宝安産)は同一の生命エネルギーの発露として同一視されていました。男性器を象った巨木は生命力そのものの依り代であり、農作物が実を結ぶように集落の命を次世代へ繋ぐ象徴でした。
下來伝地区に鎮座する「ほだれ大神」の御神体は、高さ約2.2メートル、周囲周囲約1メートル、重さ約600キログラムという規格外の杉の巨木で彫り上げられています。結婚1年以内の「初嫁」が晴れ着(留袖や道中着)をまとい、この御神体に跨る行為は、御神体の圧倒的な生命力を自らの身体に直接受け止め、新しい命を宿すための「神人合一(しんじんごういつ)」の聖なる儀礼でした。かつて閉鎖的になりがちだった山間部の集落において、外部から新しく嫁いできた女性を村中総出で歓迎し、集落の一員として祝福する包摂のシステムでもあったのです。