「エロい」という形容詞は、外来語である「エロチック(erotic / エロティック)」に日本語の形容詞化語尾「い」が結合して生まれた造語です。そのルーツを遡ると、古代ギリシャ神話に登場する愛と情熱の神「エロース(Eros)」に行き着きます。
古代哲学において、エロスは単に肉体的な交わりを指す言葉ではありませんでした。哲学者プラトンが『饗宴』の中で説いたように、エロスとは「不完全な人間が完全なる美や真理を求め、満たされないものを埋めようとする強烈な衝動」を意味していました。さらに精神分析の創始者ジークムント・フロイトや哲学者ジョルジュ・バタイユは、エロスを「死の本能(タナトス)」と対をなす「生への本能・根源的な生命エネルギー」として位置づけています。つまり、エロティシズムの根底には、生きることそのものへの純粋な執着とエネルギーが宿っています。
日本国内における変遷を辿ると、1930年代の大正デモクラシー終焉期に「エロ・グロ・ナンセンス」という社会風潮とともに言葉が定着しました。当時は反体制的・享楽的なアンダーグラウンドのニュアンスが色濃く、戦後の高度経済成長期から昭和後期にかけては、成人向けコンテンツの隆盛に伴ってタブー感を含む俗語として浸透しました。しかし平成から令和、そして2026年の今日に至るまでに、その意味合いは「生々しい欲望」から「洗練された魅力を表すカジュアルかつ奥深い表現」へと劇的な脱皮を遂げています。