物語の前半、サマーリゾートを装った共同体「ビーチ」において、チシヤはアリスやウサギと接触しながらも、彼らを冷酷に罠へと陥れました。トランプ強奪の囮としてアリスを利用し、裏切り者として監禁されるよう仕向けた行為は、多くの読者や視聴者に強い衝撃を与えました。
この裏切りの背景にあったのは、他者に対する絶対的な不信感と自暴自棄に近い好奇心です。当時のチシヤにとって、アリスたちの掲げる「仲間との絆」や「生への執着」は、欺瞞に満ちた滑稽な幻想に過ぎませんでした。「人は極限状態になれば誰しも利己的になり、仲間を売るはずだ」という自らの仮説を実証するため、あえてアリスを試すような非道な策を巡らせたのです。
しかし、裏切られたアリスが絶望の淵でも他者を思いやる姿を見せたことで、チシヤの頑なな心には小さな亀裂が生じ始めました。計算づくの裏切りは、彼自身が人間という生き物の本質を確かめるための危険な実験でもありました。