古文単語「ひげかへる」の現代語訳として辞書に掲載されている主な意味は、以下の2点に集約されます。
① 髭が生えそろう。髭が生えて大人の男立ちをする。元服して一人前になる。
② (老人の)髭に白いものが混じる。白髪交じりの髭になる。
大学受験や古典読解において圧倒的に頻出するのは①の「髭が生えそろって一人前の大人の男になる」という意味です。当時の貴族社会において、男性の幼少期は「童(わらわ)」と呼ばれ、髪を左右に結び、髭のない滑らかな顔立ちが基本でした。元服(成人の儀式)を経て年齢を重ね、頬や顎にしっかりとした髭が生えそろうことは、単なる生理現象にとどまらず「社会的に自立した一人前の成人男性」として公認された証拠でした。
古語における「ひげかへる」の由来を紐解くと、接尾語的に複合動詞を作る「かへる(変る・返る・替る)」の語源的機能に行き着きます。ここでの「かへる」は「産毛から本格的な大人の髭へと生え変わる」「状態が一変する」というニュアンスを含んでおり、少年から青年・壮年への劇的なライフステージの転換を鮮やかに切り取った言葉であることが分かります。