家事の最中に靴紐を結ぼうとしたり、床の掃除で腰を落としたりしたわずかな隙に、まるで待ってましたと言わんばかりに背中に飛び乗られる経験を持つ飼い主は多いはずです。猫が背中に乗ってくる理由の根本には、猫特有の立体的な空間認識と機会を逃さない狩猟本能的な俊敏さが関係しています。
猫は野生時代、地上よりも外敵から身を守りやすく、獲物を見下ろせる「高い場所」を好んで生活の拠点としていました。人間が前屈みになった背中は、猫の目線から見ると「平らで適度な高さがあり、しかも温かい特等席」に映ります。さらにそこへ、飼い主に対する「自分の匂いを擦り付けて所有権を主張したい」というマーキング欲求や、「自分に視線を向けてほしい」という強い関心要求が重なることで、瞬時のジャンプが引き起こされます。
単なる気まぐれに見えるこの跳躍は、愛猫が飼い主の動作を日常的に緻密に観察し、「いま乗れば安定する」と学習した結果生じる、きわめて計算された甘えのアクションなのです。