『安芸の宮島』を語る上で絶対に外せないのが、2009年末の『第60回NHK紅白歌合戦』における圧巻のパフォーマンスです。7年連続の出場となったこの年、水森かおりはブライダルファッションデザイナーの桂由美がデザインを手掛けた超巨大衣装でステージに登場し、視聴者の度肝を抜きました。
ステージ中央に登場した当初は、優雅なロングドレス姿だった水森かおり。しかし、楽曲のサビへ向けて歌がクライマックスに達すると、背後の巨大なセットがせり上がり、高さ約6メートル、幅約9メートルにも及ぶ純白のドレスへと変貌を遂げました。幾重にも重なる布地にLED照明とプロジェクションの光が投影され、まるで瀬戸内の夜の海に浮かび上がる厳島神社の神秘的な姿を表現したかのような幻想的なイリュージョンが完成したのです。
当時の報道や本人の回想手記によると、この水森かおり紅白歌合戦衣装の内部には強固な足場と安全ベルトが仕込まれており、高所恐怖症を抱える彼女にとっては「歌唱と恐怖心の極限の戦い」であったと明かされています。しかし、揺れる足場の上でも一切ブレない完璧な発声と伸びやかなハイトーンボイスを披露。単なる奇抜な演出に終わらせず、「歌唱力あってこその巨大衣装」という評価を決定づけました。この2009年の成功が、その後の紅白における名物演出シリーズの礎となったのです。