かつてカヌースラロームは、欧州勢の独壇場だった。アルプス山脈の雪解け水が育んだ圧倒的な水量の河川環境と、幼少期から激流に親しむ育成文化。日本勢にとって、その壁はあまりにも高く、分厚かった。
しかし、彼はその格差を言い訳にしなかった。日本国内の限られた練習環境を逆手に取り、静水域での緻密な身体操作トレーニングや、バイオメカニクスに基づいた筋出力の最適化を愚直に追求。体格に劣るアジア系アスリートが世界で勝つための「再現性の高い勝利の方程式」を構築してみせたのだ。そのアプローチは、今や競技の枠を超えて他種目のアスリートからも参照されている。