そもそも『ONE PIECE』の原作者・尾田栄一郎氏が海軍大将のモデルとして昭和の邦画スターを選んだことは、ファンの間では語り草だ。赤犬(サカズキ)は菅原文太、青雉(クザン)は松田優作、そして黄猿(ボルサリーノ)は田中邦衛。いずれも日本映画史に燦然と輝く偉大な名優たちである。
中でも田中邦衛氏演じる役柄は、単なる二枚目でも悪役でもない。どこか哀愁を漂わせつつも、一度キレれば何をしでかすかわからない不気味さと愛嬌を同居させた唯一無二の存在だった。『若大将』シリーズの「青大将」役で見せた調子の良いライバル像や、『北の国から』で見せた泥臭くも温かい父親像。その変幻自在な演技力こそが、光の速さで移動しながら「どっちにしようかねぇ〜」と語る黄猿のつかみどころのないキャラクター像に見事に結晶化している。