SNS上では「東京や大阪では博多通りもんのCMを一度も見たことがない」「なぜあんなに有名な銘菓なのに全国放送しないのか」という疑問が定期的にバズを生み出します。結論から言えば、このCMの主たる放送地域は福岡県および九州各県・山口県の一部に厳格に絞り込まれています。
この地域限定展開には、明月堂が貫く明確な経営哲学が存在します。全国区の大手菓子メーカーであれば、関東や関西のキー局でスポットCMを大量投下して全国展開を目指すのが定石です。しかし明月堂は、創業以来「博多のお土産菓子としての独自性と品質保持」を最優先事項に掲げています。首都圏の百貨店で行われる九州物産展やアンテナショップを除き、常設店舗を福岡近郊に限定しているからこそ、CMもまた現地に訪れた観光客や地元住民に向けて集中的に放映されているのです。
「現地に行かなければ買えない、見られない」という制限は、現代のマーケティングにおいて最強の参入障壁として機能します。関東や関西の生活者にとって、旅先のホテルでふと目にする「博多通りもん」のローカルCMは、非日常の旅情を呼び覚ますプレミアムなスイッチとして機能しています。