耳鳴りには高音の「キーン」「ピピー」という金属音と、低音の「ザーザー」「ボーン」という水流や風のような音が存在します。このうちザーザー耳鳴りの原因として臨床現場で最も警戒されるのが、内耳の蝸牛(かぎゅう)を満たすリンパ液の循環不全や、聴覚細胞の急激な虚血障害です。
最も迅速な対応が求められるのが突発性難聴です。ある日突然、片方の耳の聞こえが悪くなると同時に、激しいザーザー音やゴーという雑音が発生します。発症から72時間以内のステロイド治療開始が聴力回復の鍵を握り、放置して1〜2週間が経過すると不可逆的な聴力低下や頑固な後遺症が残るリスクが跳ね上がります。
また、20代から40代の働く世代に急増しているのが低音障害型感音難聴です。低音域の聴力だけが選択的に落ちるため、「何となく音がこもる」「耳の奥で換気扇が回っているようなザーザー音がする」といった自覚症状にとどまり、難聴と気づかないまま悪化させるケースが目立ちます。さらに、めまい発作を繰り返すメニエール病初期症状でも、まったく同様の内リンパ水腫によるザーザー音が先行して現れます。
一方で、音の性状が血流の波に連動している場合は、内耳ではなく血管系に原因がある血管性耳鳴りを疑わなければなりません。首や頭部の血管が狭窄していたり、奇形が生じていたりすると、乱気流の音が骨を伝わって耳に届きます。ザーザーという音が自分の脈拍と完全に一致してリズミカルに響く「拍動性耳鳴り」は、耳鼻科領域を超えた血管病変のサインです。