疲労回復に関してインターネット上で信じられている情報の中には、医学的に明確な誤謬が含まれているケースが多々存在します。代表的な3つの誤解を正しく解体していきましょう。
もっとも危険な誤解が「アルコール(寝酒)は寝つきを良くする」という俗説です。確かにアルコールに含まれる鎮静作用は一時的な入眠を早めますが、体内でアセトアルデヒドへ分解される過程で交感神経を強く刺激します。その結果、心拍数は上昇し、発汗と利尿作用によって脱水状態を招き、睡眠後半には頻繁な中途覚醒と浅いレム睡眠の乱立が起こります。寝酒をして横になる行為は、「脳が気絶している」だけであり、代謝による疲労回復は著しく阻害されます。
次に、「カフェインは夕方までに切り上げれば夜の睡眠に影響しない」という思い込みです。カフェインの血中濃度が半分になる「半減期」は一般に約5〜7時間とされていますが、肝臓の代謝酵素活性には個人差があり、体質によっては完全な代謝に8時間以上を要します。午後3時以降に摂取したエナジードリンクや濃いコーヒーは、入眠を妨げない場合でも、徐波睡眠(深睡眠)の深さを物理的に削り取ります。「眠れているけれど疲れが抜けない」と訴える人の多くが、夕方以降の無自覚なカフェイン摂取によって睡眠構造を自ら壊しているのが現状です。
さらに、「朝起きられないのは気合やメンタルの弱さの問題である」という精神論も科学的根拠を欠いています。起床時の覚醒度は、メラトニンの分泌停止、深部体温の上昇、コルチゾールの分泌という精緻なホルモン連動によってコントロールされています。生化学的な準備が整っていない体に無理やり鞭を打っても、倦怠感の悪循環を深めるだけです。