物語の根底にある最大の仕掛けは、「世界線の改変(タイムリープ)」と、小山門出・中川凰蘭という2人の少女の不可分な絆です。物語中盤で明かされる過去の真実において、本来の世界線では門出が小学生時代に侵略者の秘密道具を使って周囲の人間に危害を加え、自責の念から自ら命を絶っていました。親友の死に絶望したおんたんは、侵略者の道具を使って世界を巻き戻し、「門出が生き残る世界」へと歴史を改変します。その代償として、おんたんは自らのおかしなキャラクター(ハイテンションな言動)を演じ続け、世界の破滅を門出から遠ざけようと奮闘していたのです。
物語の終盤、人類側による侵略者への過剰な攻撃と母艦の暴走により、東京は壊滅的なカタストロフィを迎えます。しかし、浅野いにお氏が描いた真の結末は、単純な人類滅亡やハッピーエンドといった二元論には収まりません。世界が崩壊の極致に達したあと、物語は「侵略者が現れなかった世界」、あるいは「破滅を乗り越えた先にある新しい日常」へと収束していきます。
ラストシーンで描かれるのは、巨大な母艦が消え去った青空の下、再び出会い直す門出とおんたんの姿です。どれほど世界が理不尽に変容しようとも、「誰か一人と通じ合える日常さえあれば生きていける」という切実なメッセージが、破壊の果てに残された静謐な空間から鮮烈に浮かび上がります。