無気肺の診断がついた場合、確立された無気肺の治療法に基づき、肺を速やかに再拡張させる包括的なアプローチが展開されます。
気管内に分泌物が貯留して自力排出が困難な局面では、無気肺の痰の吸引・排痰ケアが最優先されます。カテーテルを用いた口腔・鼻腔からの吸引に加え、痰を体外へ送り出す「ハッフィング法(息を吐き出す技術)」や、重力を利用して肺の末梢から中枢へ痰を移動させる「体位ドレナージ」を組み合わせます。重度の気道閉塞で通常の吸引が届かないケースでは、気管支内視鏡を用いて直接粘液栓を吸い出す気管支洗浄が選択されます。
同時に重要なのが、理学療法士や臨床スタッフと連携した無気肺の呼吸リハビリテーションです。インセンティブ・スパイロメトリー(コーチ器具やトライフローなど)と呼ばれる器具を用い、患者自身が目盛りを見ながら深呼吸を視覚的にトレーニングする手法はエビデンスが豊富です。胸郭の拡張を促す深吸気保持(息を吸った状態で3秒キープする)を1時間に数回繰り返すだけでも、虚脱した肺胞へ再び空気の道が切り開かれます。
病棟における無気肺の看護計画では、以下の4点が軸として組み立てられます。
1. 多角的疼痛管理:創部痛を抑えなければ深呼吸ができないため、硬膜外麻酔やPCA(自己調節鎮痛法)を適正に運用し、呼吸を妨げない除痛を図る。
2. 体位変換とセミファーラー位:ベッドの背上げ(30〜45度)を維持して横隔膜の下降を助け、定期的な側臥位変換で肺の圧迫を回避する。
3. 客観的モニタリング:呼吸数、SpO2、聴診による呼吸音の減弱箇所の追跡、痰の性状(粘稠度や色)の厳格な観察。
4. 患者教育と心理的支援:咳をしても手術創が破れることはないという事実を説明し、傷口を手やクッションで支持しながら咳をする「創部圧迫排痰法」を指導する。