なぜ金井克子にしか、あの世界観は表現できなかったのか。その答えは彼女の生い立ちにある。由美かおるや奈美悦子らを輩出した名門「西野バレエ団」の第一期生として鍛え上げられた圧倒的な身体能力と表現力。それが彼女の骨格をなしていた。
単にダンスができるというレベルではない。軸のぶれない立ち姿、指先の一ミリ単位の角度まで計算し尽くされた空間把握能力。バレエの基礎があるからこそ、あのアクションは「コミカル」にならず、「至高のアート」へと昇華された。歌い手でありながらダンサーとして舞台を支配する存在感。彼女は日本におけるシンガー・ソング・ダンサーの先駆者だったのである。