辛さの単位であるスコヴィル値。タバスコが数千スコヴィルとされる中、群馬の最前線で使われているのは、キャロライナ・リーパーやトリニダード・スコーピオンといった100万スコヴィル超えのモンスター級ペッパーだ。しかし、狂気とも言える辛さを実現しながら、なぜ人々はその一杯を求めてやまないのか。
その秘密は「脂」と「発酵」のマスキング効果にある。上州豚の上質な背脂と地元蔵元の上州味噌が、舌の痛覚レセプターを優しくコーティングし、カプサイシンが直接神経を刺す痛みを絶妙に緩和する。刺激が旨味のクッションに包まれて遅れてやってくるため、脳は激痛ではなく「強烈な快楽」として認識するのだ。
唐辛子のカプサイシンが引き起こすエンドルフィンとドーパミンの大量放出。一度この快感回路が開いてしまえば、並の刺激では到底満足できなくなる。群馬の激辛麺が持つ底知れぬ中毒性は、緻密な味覚設計と脳科学的なアプローチの結晶とも言える。