速水真澄という複雑怪奇なキャラクターを紐解く上で欠かせないのが、彼の生い立ちと養父・速水英介との歪んだ親子関係です。真澄は幼少期に実母を亡くし、大都芸能の創業者である英介の養子として引き取られました。
英介はかつて、劇団つきかげを主宰する月影千草の才能と名作『紅天女』の上演権に異常な執着を見せ、千草の恩師であり夫同然の存在であった尾崎一蓮を策謀によって破滅・自殺へと追い込んだ張本人です。英介は真澄に対しても情愛を注ぐことはなく、自らの野望を継承する冷徹な後継者として徹底的に叩き込みました。
真澄が被り続けてきた「仕事の鬼」という仮面は、養父の期待に応え、厳しいビジネス界で生き残るための防具に他なりませんでした。自らの過去の真相と英介への複雑な愛憎を抱えながら、真澄はマヤという無垢な光に出会うことで、自らの魂を取り戻していく過程が描かれています。