矢状面の後方境界線は、顎関節の解剖学的メカニズムをそのまま反映しています。下顎後退接触位(RCP)から顎を開いていく際、初期の約20〜25mmの開口量までは下顎頭が関節窩内で純粋な回転運動のみを行います。この回転軸を中心とした運動をターミナルヒンジ運動(下顎終末蝶番運動)と呼びます。
この純粋回転の限界点に達すると、外側翼突筋の牽引と靭帯の制限により、下顎頭は関節結節の傾斜に沿って前下方へと滑走(並進運動)を始めます。回転と滑走が組み合わさることで、下顎は最も大きく口を開いた最大開口位(Maximum Open Position)へと到達します。これが後方開口限界路の全貌です。
一方、前方限界路は、最前方位から下顎頭の前方滑走を維持したまま開口することで形成され、最終的に最大開口位で後方開口限界路と合流します。つまり矢状面の外枠は、「歯牙接触による限界」「純粋回転による限界」「最大滑走による限界」という3つの異なる生体制限によって描かれているのです。