壇ノ浦の海を臨む山口県下関市には、安徳天皇を主祭神として祀る赤間神宮(旧阿弥陀寺)が鎮座しています。現地を訪れると、白壁と朱塗りのコントラストが鮮やかな「水天門」が参拝者を迎えます。この社殿の様式は、二位尼が遺した「波の下の都」すなわち竜宮城の姿を模して建立されたものです。
境内の奥には、安徳天皇阿弥陀寺陵があり、宮内庁の治定墓所として静謐な空気に包まれています。さらに隣接する「七盛塚」には、平知盛、平経盛、平教経ら平家武将たちの墓碑が立ち並び、小泉八雲の怪談『耳なし芳一』の舞台としても知られています。
下関で毎年5月2日から4日にかけて開催される「先帝祭」では、壇ノ浦で生き残った平家の官女たちが、過酷な境遇に身を落としながらも命日に安徳天皇の御陵へ参拝した故事にちなむ「上臈道中(じょうろうどうちゅう)」が執り行われます。豪華絢爛な衣装をまとった太夫が「外八文字」を踏みながら練り歩く姿は、800年以上の時を超えて受け継がれる鎮魂の儀式です。
参拝者や歴史ファンの間でも、「水天門を見上げると、二位尼が幼帝に語りかけた言葉の重みが胸に迫る」「単なる観光名所ではなく、日本人が受け継いできた供養の精神が宿っている」といった深い感慨が寄せられています。