「満身創痍」という言葉のルーツは、古代中国の戦乱期における記録や兵法書、歴史書の記述に遡ります。「創痍」という単語自体は、古代中国の古典である『漢書』や『戦国策』などにも頻繁に登場する極めて古い漢語です。激しい白兵戦が繰り広げられた戦場において、鎧を切り裂かれ、矢や槍によって無数の傷を負いながらも倒れずにいる武将や兵士の痛々しい姿を描写する言葉として用いられていました。
これが日本に伝来したのち、軍記物語などを経て武士の激戦の様子を形容する言葉として定着しました。そして近代以降、文学作品や新聞報道を通じて比喩的表現としての広がりを見せます。戦場で敵の刃を受けるリアルな肉体描写から、社会的な批判の矢を全身に浴びる政治家や、相次ぐトラブルで機能不全に陥った組織を指す比喩へと、その守備範囲が広がっていったのです。