織田作之助の異能「天衣無縫(てんいむほう)」は、彼自身の類稀なる身体能力と相まって、純粋な戦闘において無敵に近い強さを誇っていました。その能力の本質は、「発動から5秒から6秒先の未来を完全に予知・体験できる」というものです。
自身に迫る致命的な危機を事前に知覚し、その未来を回避するように現在の行動を修正する――。この予知と行動のループにより、狙撃や暗殺、トラップの類は彼に通じません。若き日には「凄腕の暗殺者」として裏社会にその名を轟かせ、太宰治をして「織田作を本気で怒らせたら、この世の誰も彼を殺せない」と言わしめた所以です。
しかし、この完全無欠の異能には唯一にして最大の弱点が存在しました。それが、同一の予知能力を持つ者同士が相対したときに発生する「異能特異点」現象です。
ミミックの首領アンドレ・ジードの異能「狭き門」もまた、数秒先の未来を予知する能力でした。両者が銃を向け合った瞬間、織田作が未来を視て行動を変えれば、ジードもその回避行動を視て対応を変え、さらに織田作がその先を視るという「無限の予知の連鎖」が発生。二人の意識は時間の裂け目へと引きずり込まれ、最終的にはお互いの未来視を完全に無効化させた状態での、純粋な反射神経と銃撃戦へと持ち込まれました。魂の双子とも呼べる敵と互いの存在を完全に理解し合いながら、両者が同時に放った銃弾によって相撃ちとなり、織田作の肉体は力尽きることとなりました。