インターネット上の掲示板やSNSでは、「前日にオナニーしたけれど何一つ引っかからなかった」「影響が出るなんて大嘘」といった言説が散見されます。なぜこのような真逆の体験談が飛び交うのでしょうか。
最大の理由は、受診者が受けた「検査項目の範囲」と「採尿テクニック」の個体差にあります。
まず、会社や学校で実施されるごく一般的な定期健康診断(法定健診)では、PSA検査などの特殊項目は含まれておらず、尿検査と簡易的な採血のみであることがほとんどです。また、健康な成人男性が前日の早い時間帯(夕方など)に射精し、その後就寝前や起床直後に十分な排尿を行っていた場合、尿道内の精液成分が洗い流され、たまたま試験紙の検出限界以下に収まることがあります。
しかし、これは「運良く偽陽性を回避できた」に過ぎず、医学的に影響がゼロだったことを意味しません。日本人間ドック・予防医療学会などの関連学会でも、尿検体のコンタミネーション(汚染)は診断精度を著しく下げる要因として注意喚起されています。「前夜遅くに射精した」「当日朝に我慢できずオナニーした」「採尿時に出始めの尿(初尿)をそのままカップに入れた」という条件が重なると、ほぼ確実に尿蛋白や尿潜血に異常値が出現します。
「嘘」と決めつけて前日に射精を行い、いざ結果票が届いて「尿蛋白2+:要精密検査(腎臓内科を受診してください)」と書かれていた場合の精神的ショックや、平日に休暇を取って医療機関へ赴く時間的・金銭的損失を考えれば、根拠のないネットの噂を過信するのは極めてハイリスクな選択です。