厚生労働省や製薬業界は「有効成分も、分量も、効能・効果も先発医薬品と同一」と盛んにアピールしてきた。この説明は法規上・化学構造上は事実であるが、臨床現場における製剤学的な観点から見れば、決して「100%完全なクローン」ではない。先発薬と後発薬の間には、患者の体感差や薬理動態のブレを生じさせる決定的な要素が複数存在する。
最大の相違点は「添加物(賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、コーティング剤など)」と「製剤設計・製造工程」にある。先発薬の有効成分を保護する特許期間(物質特許)が満了しても、製薬会社が長年の開発投資で培った錠剤の溶け方や吸収スピードをコントロールする製剤特許・用途特許は残存している場合が多い。後発メーカーは特許に抵触しないよう、異なる添加物を組み合わせ、独自のカプセル技術や錠剤プレス法を用いて製剤化を行う。
この添加物の違いは、一般に無害とされる乳糖、デンプン、セルロース誘導体などであっても、特定の食物アレルギーや乳糖不耐症を抱える患者にとっては消化器症状やアレルギー反応のトリガーとなり得る。また、薬が胃や腸で溶け出すスピードを示す「溶出曲線」において、試験管内では基準を満たしていても、生体内の酸性度や消化管運動の個体差によって吸収の立ち上がりに微妙なズレが生じることが指摘されている。
さらに、後発医薬品の承認要件である「生物学的同等性試験(BE試験)」の基準自体が、誤解を生みやすい構造を抱えている。BE試験では、健常成人を対象に先発品と後発品を投与し、血中濃度時間曲線下面積(AUC)と最高血中濃度(Cmax)を比較する。その際、後発品のパラメータが先発品の80%から125%の信頼区間に収まっていれば「同等」と見なされる。統計学的には許容範囲とされても、数値の上限(125%)に近い製品と下限(80%)に近い製品とでは、実質的に最大1.5倍近い体内動態の差が生じる計算になる。健康な若者であれば代償できるわずかなブレが、代謝機能の衰えた高齢者や多剤服用患者において、予想外の不調となって表面化するケースは否定できない。