ドラマ版の成功を語る上で欠かせないのが、杉咲花と杉野遥亮という稀有な表現者二人が見せた真摯なアプローチです。現場の制作関係者の証言によると、主演の杉咲花はクランクインの数か月前から盲学校や視覚障害者支援施設へ足を運び、実際に弱視を抱える当事者と綿密な対話を重ねていたといいます。
盲学校生・赤座ユキコを演じるにあたり、杉咲が徹底したのは「全盲ではなく弱視特有の視線の合わせ方」でした。光を感じる方向に自然と顔が向く仕草や、白杖から伝わる路面の微細な振動を捉える手の筋肉の緊張感など、記号的な演技を一切排した佇まいは、障害当事者団体からも「極めて誠実に日常が再現されている」と絶賛されました。
一方、純情なヤンキー・黒川森生を演じた杉野遥亮もまた、自身のパブリックイメージを覆す快演を見せました。顔に大きな傷を持ち、社会から「危険人物」のレッテルを貼られてきた森生が、ユキコの前でだけ見せる大型犬のような無邪気さと、彼女の生きる過酷さを知った瞬間に見せる痛切な眼差し。インタビューで杉野は「森生を演じることで、自分自身がいかに無意識の偏見の中で生きていたかを突きつけられた」と告白しており、その飾らない人間性が役に血肉を通わせました。
さらに、ユキコを厳格な愛情で守ろうとする姉・イズミ役の奈緒、森生が憧れるアニキ分・金沢獅子王役の鈴木伸之、森生に思いを寄せるハチ子役の生見愛瑠といった実力派キャストが脇を固め、単なる少女漫画の実写化とは一線を画す濃密な会話劇を生み出しました。