手羽元の唐揚げを失敗なくジューシーに揚げるための最大の勝負どころは、油鍋に入れる前の下準備にあります。現場の料理人や料理研究家が異口同音に指摘するのは、「骨の下処理(開き)」の圧倒的な効果です。
手羽元の太い部分の骨に沿って、キッチンバサミや包丁で深さ1.5cmほどの切れ込みを1〜2本入れます。可能であれば骨から肉を両側に開く「観音開き」にして平らにならすことで、肉の厚みが均一になり、骨の周りへ直接油の熱が届くようになります。さらに、子ども向けやパーティー料理として定番の「チューリップ」にする手法も極めて理にかなっています。細い方の骨の関節周辺の筋を切り、肉を太い方へ裏返すように押し下げることで、球状に肉がまとまり、骨から熱が均一に伝わりやすくなります。
続いて重要なのが「下味のつけ込み時間」と「温度管理」です。調味料の浸透圧と肉の保水性に関する実験データでは、手羽元のような厚みのある肉は室温で20〜30分漬け込むのが最も肉質を柔らかく保つバランスとされています。前日から一晩漬け込む場合は、塩分濃度が高すぎると肉の水分が抜けてパサつく原因になるため、醤油や酒をベースにしつつ、保水効果を高める砂糖や少量のマヨネーズをブレンドするのが鉄則です。そして何より重要なのは、揚げる直前に必ず肉を常温に戻しておくことです。冷蔵庫から出した直後の肉(中心温度5〜8度)をそのまま揚げると、油の温度が一気に20度以上急低下し、衣が油を吸ってベチャつく最大の原因となります。