かつて安価で色鮮やかな加工肉が当たり前だった時代に、一石を投じた人物がいる。元食品添加物商社のトップセールスマンであった安部司氏だ。同氏の著作『食品の裏側』はベストセラーとなり、魔法のように見映えを良くする粉末やボイル加工の裏側を告発。日本の食品業界全体に大きな衝撃を与えた。
この潮流は、それまで効率重視だった食肉加工業界の姿勢を根底から揺さぶることになる。見映えの良さや賞味期限の長さだけを追求するのではなく、「食の安全」を真ん中に置く消費行動が定着していったのだ。工場で添加物を大量投入する大量生産モデルから、素材そのものの旨味を最大限引き出す丁寧な手仕事への見直しが、各地の工房やメーカーで始まった。