紙の本を作る際、一般的に原価の約20〜25%が「印刷・製本・用紙代」、約8〜10%が「取次・書店への配送料や物流マージン」に消えるとされています。一見すると、これらが丸ごと削られる電子書籍は、紙の半額程度で提供されても不思議ではないように思えます。しかし、出版社の財務データや編集現場への取材を進めると、デジタル特有の新たな固定費と中間マージンが重くのしかかっている実態が浮き彫りになります。
第一の要因が、電子書籍プラットフォーム手数料です。Amazon Kindle、楽天Kobo、Apple Booksなどの大手配信基盤を利用する場合、プラットフォーム側に販売価格の約30%を決済手数料および配信インフラ利用料として支払う必要があります。紙の流通における取次会社(日販やトーハンなど)のマージンが約8〜10%であることを考えると、電子の手数料率は決して低くありません。
第二に、デジタル化に伴う制作コストとDRM(デジタル著作権管理)の維持費です。過去の既刊本をスキャン・OCR処理してリフロー型ePubデータを再構築する費用、専門の校閲費、さらに海賊版対策のためのセキュリティ技術ライセンス料が毎月発生します。これらに加え、著者に支払われる電子書籍の印税率は、紙の書籍(約8〜10%)よりも高い15〜25%程度に設定されるケースが主流です。
上記の内訳から分かる通り、印刷や配送が不要になった分の浮いたコストは、ストアへの手数料増や著者への印税率上乗せ、電子フォーマット最適化の工数へと移転しています。出版社から見れば「電子だからといって利益が何倍にも膨らむわけではない」というのが率直な台所事情なのです。