三兄弟の中でも特別異彩を放っていたのが二男の田村正和だ。ニヒリズム漂う美しい剣豪を演じた『眠狂四郎』で見せた唯一無二の美学は、昭和の時代劇ファンを虜にした。静寂の中に漂う色気と切れ味鋭い殺陣は、時代劇黄金期の象徴として語り継がれている。
平成に入ると、彼の躍進はさらに加速する。特にテレビドラマ業界へ与えた衝撃は計り知れない。その筆頭が、フジテレビ制作による不朽の名作『古畑任三郎』だ。独特の語り口とスーツ姿、そして卓越した洞察力で犯人を追い詰める刑事ドラマの金字塔は、田村正和という稀代の役者がいたからこそ誕生した。
それまでの刑事像を根本から覆し、コミカルさとシリアスさを自在に行き来するキャラクター造形は、日本全国に「古畑ブーム」を巻き起こした。時代劇のスターから現代劇のトップランナーへ。見事な変貌を遂げた彼の姿は、テレビ史に燦然と輝いている。