オカルト的な事象として語られがちな「財布が見つかるおまじない」ですが、近年の認知心理学や脳科学の観点から分析すると、極めて論理的な裏付けが存在することがわかります。
人は貴重品を紛失した際、脳の扁桃体が過剰に興奮し、いわゆるパニック状態(激しい不安と混乱)に陥ります。この状態では視野が極端に狭くなる「トンネルビジョン」と呼ばれる現象が発生します。目の前に探している財布があるにもかかわらず、脳がその視覚情報を認識できずに見落としてしまう「注意性スルー」が起きるのです。
ここで「はさみを耳元で鳴らす」「にんにくと唱える」といった日常では行わない特異な行動を挟むと、脳に強力な認知的ブレイク(中断)がかかります。一度思考のループを断ち切り、扁桃体の興奮を鎮めて前頭前野の働きを取り戻すことで、「冷静な注意力」が再起動します。その結果、先ほどは見えていなかった死角や、思い至らなかった移動経路の記憶が鮮明に呼び起こされるのです。
また、「道具に願いを託す」という外在化のプロセスは、自分を責める強いストレスを軽減し、前向きな行動意欲を回復させるセルフコンパッション(自己慈悲)の役割も果たしています。