SNSや口コミ掲示板、Q&Aサイトを検証すると、ネット使用料不要物件に対して「昼間は快調だが、夜21時を過ぎると動画が止まる」「テレワーク中のビデオ会議で画面が固まる」といった不満が数多く投稿されています。現場で起きている通信速度が遅い理由には、集合住宅特有のインフラ構造が関係しています。
最も根本的な原因は、マンション全体に引き込まれた1本(または少数)の幹線光ファイバーを、全入居者で「山分け(シェアド・アクセス)」している点です。総務省のトラフィック集計データ等でも示されている通り、インターネットの利用量は在宅時間が増える20時から24時にかけて跳ね上がります。同じ建物内で複数の住人が同時に高解像度の動画ストリーミング視聴やオンライン対戦を行えば、回線の帯域が逼迫し、実効速度が数十Mbpsから数Mbpsまで急降下するのは構造上避けられません。
さらに見逃せない盲点が、室内の設備仕様です。近年増えているのが、壁のコンセント部分にWi-Fiアクセスポイントが一体化した埋め込み型Wi-Fiルーターです。部屋がすっきりし、配線が露出しないスタイリッシュな見た目で賃貸市場では好評を博していますが、通信性能の面ではボトルネックになりがちです。
埋め込み型機器は壁の中に金属や配線とともに収まっているため放熱性が厳しく、電波の放射範囲も限られます。また、一度施工されると機器の更新が数年単位で滞りやすく、旧規格のWi-Fi 4(IEEE 802.11n)やWi-Fi 5(11ac)の低スペックモジュールが据え置かれている事例が少なくありません。ギガビット対応の回線が共用部まで来ていても、室内の壁面ルーターが最大100Mbps制限の仕様であったり、アンテナ性能が貧弱であったりするために、手元のスマホでは「遅くて使い物にならない」という事態が発生するのです。