長年にわたり時代劇の裏方として刀傷を刻んできた福本さんの名が世界に轟いたのは、2003年公開のエドワード・ズウィック監督作、トム・クルーズ主演のハリウッド大作『ラストサムライ』でした。
監督をはじめとするハリウッドの制作陣は、オーディションに現れた福本さんの無言の立ち姿、研ぎ澄まされた体幹、そして歴戦の現場で刻まれた顔の深い皺に息を呑んだといいます。劇中で彼が演じたのは、トム・クルーズ演じるネイサン・オールグレン大尉を監視し続ける、一言も言葉を発しない寡黙なサムライ「ボブ」役でした。英語が話せないどころか、劇中で言葉を発する場面がほとんどないにもかかわらず、その鋭い眼光と命を賭して主君を守る殺陣のキレは、ハリウッドの一流スタッフと世界中の観客を驚嘆させました。
その職人人生の集大成となったのが、2014年公開の映画『太秦ライムライト』です。時代劇の衰退と映画作りの裏側を描いた本作で、福本さんは芸歴半世紀以上にして初の主演を務めました。カナダで開催された第18回ファンタジア国際映画祭において、福本さんは当時71歳にして日本人初となる最優秀主演男優賞(シュヴァル・ノワール賞)を受賞。主役を引き立てることに徹してきた「究極の脇役」が、国際舞台の頂点で世界一の主役として認められた歴史的瞬間でした。