卓越した脚本を完璧な映像美へと昇華させたのが、アンナチュラルにおける塚原あゆ子の演出です。野木亜紀子のテンポの速い会話劇に対し、塚原演出は役者の微細な視線の揺らぎや環境音、光と影の陰影を巧みに捉え、言葉以上の感情を画面に定着させました。主題歌である米津玄師『Lemon』が流れ出すタイミングの計算し尽くされた演出は、テレビドラマ史に残る演出術として名高い事実です。
制作陣の公式インタビューや証言によると、架空の組織であるUDIラボの設定秘話にも強いこだわりが隠されています。日本における異状死体の解剖率の低さ(先進国の中でも極めて低い水準)という現実の医療問題を背景に、「もし国や自治体の予算で立ち上げられた先進的な民間研究機関が存在したら」という綿密なシミュレーションからラボの骨格が作られました。
白衣を着て気取るのではなく、ゴム手袋を器用に外し、時には解剖台の横で軽食の相談をするような「生活と労働の地続き」を徹底して描写したことが、UDIラボの面々に対する圧倒的な親近感と説得力を生み出しました。