タイパ(タイムパフォーマンス)や効率性を重視する現代の若者たちが、わざわざ数時間かけて地方のローカル食堂へ足を運んでいる。彼らが求めているのは、SNS映えする派手なスイーツではない。お盆の上に無造作に並べられた、煮物や焼き魚といった「普通の家庭料理」だ。
過剰にマニュアル化された都市部の飲食店に息苦しさを感じる人々にとって、マニュアルの存在しない接客は新鮮に映る。タメ口混じりの温かい声かけや、頼んでもいないのに「これサービスね」と差し出される小鉢。そうした計算のない善意に触れたとき、若者たちは単なる食事以上の精神的充足感を得ている。レトロブームという一過性の流行を超え、人間らしいつながりを求める本能的な欲求が、彼らを地方へと突き動かしているのだ。