ネット上の簡易的な情報を鵜呑みにして自己流のシワ伸ばしを行い、数万円から十数万円のスーツを修復不能にしてしまうケースが後を絶ちません。スーツシワ伸ばしNG行動まとめとして、プロのクリーニング師が警鐘を鳴らす4大禁忌を提示します。
第一の誤解は、「早くシワを伸ばしたいからと、ドライヤーの吹出口を生地に密着させて加熱すること」です。一般的なドライヤーの吹出口温度は100度を超えます。特に上質なファインウールやシルク混、モヘア混の生地に直付けすると、タンパク質が熱変性を起こして硬化し、二度と戻らない「テカリ(アタリ)」が発生します。
第二の落とし穴は、「ポリエステル100%の安価なスーツに対してお風呂場の蒸気で対処しようとすること」です。スーツシワが取れない理由と対策の根本的な分岐点は繊維の組成にあります。ウールは吸湿性・放湿性による復元力を持ちますが、ポリエステルなどの合成繊維は水分をほとんど吸いません。化繊スーツについた頑固なシワは、一定以上の熱圧(アイロンの適切な温度)を物理的にかけなければ絶対に伸びない構造になっています。
第三のNGは、「濡れたタオルでスーツをゴシゴシと擦ること」です。局所的なシワを取ろうとして濡れタオルで摩擦を加えると、ウールの毛羽立ちを引き起こし、白っぽく変色したような毛羽乱れが定着してしまいます。水分を与える際は必ず細かい霧吹きで「面」として散布しなければなりません。
第四の失敗は、スーツシワ取りスプレー評判の盲点です。市販のシワ取りスプレーは繊維潤滑剤としてシリコン系成分を含んでいることが多く、ポリエステル混紡のビジネススーツには有効な一方、高級インポート生地やデリケートなSuper120's以上の極細番手ウールに使用すると、輪ジミや独特のギトつきが残り、ドライクリーニングでも落とせなくなる事例が多発しています。目立たない裾の折り返し部分でのパッチテストを怠ってはなりません。