本作の評価を決定づけたのは、長男・明(あきら)役を演じた柳楽優弥の圧倒的な存在感です。第57回カンヌ国際映画祭において、審査員長を務めたクエンティン・タランティーノ監督から絶賛を受け、トニー・レオン(ウォン・カーウァイ監督『2046』)ら世界的大スターを抑えての最優秀男優賞受賞は、日本映画史に刻まれる快挙となりました。
是枝監督の演出手法は極めて独特でした。子役たちには事前に台本を渡さず、撮影現場で口頭によって「次はこういうことが起きる」「こういう気持ちで話してみて」と状況だけを伝える手法を採用。これにより、用意された演技ではない、子供特有の生々しい視線、躊躇い、無防備な笑顔を引き出すことに成功したのです。
母親役を演じたYOUのキャスティングも見事でした。冷酷な悪女として描くのではなく、どこか魅力的で、悪気なく子供を愛していながらも、大人になりきれない未熟な女性。その危ういリアリティが、置き去りにされる子供たちの孤独をより一層際立たせました。また、不登校の少女・紗希を演じた韓英恵の冷ややかな眼差しも、兄妹たちを取り巻く無関心な「外の世界」との架け橋として鮮烈な印象を残しています。