ネット上では時折、「映画『悪の教典』の続編は、あまりのクレームの多さに制作中止になった」という噂が事実のように語られるケースが散見されます。しかし、この言説には明確な事実誤認が含まれています。そもそも制作が正式決定・クランクインした事実がないため、「制作中止」という法的手続きや公式発表が存在したわけではありません。
ただし、続編企画が企画会議の俎上に載りながらも自然消滅した背景には、日本の映画興行界を取り巻く強烈な自主規制の波がありました。2010年代半ば以降、以下のような社会的事情が映画製作のハードルを急激に引き上げました。
- 地上波テレビ放送の完全な断念:『悪の教典』のような生徒銃乱射映画は、地上波ゴールデンタイムでの放送が極めて難しく、テレビ局とのタイアップや放映権料ビジネスが成立しにくい構造にありました。
- 海外市場・配信プラットフォームのレギュレーション:Netflixなどのグローバル配信プラットフォームが台頭する中、学校内での銃乱射や未成年者への無差別殺傷描写は、米国のスクールシューティング問題と直結するため、世界市場を狙う企画として敬遠される傾向が強まりました。
- スポンサー企業のコンプライアンス意識向上:劇中で凄惨な暴力が繰り広げられる作品に対し、製作委員会として資金を出資する一般企業のハードルが年々跳ね上がっています。
興行収入23.4億円という数字は通常なら続編ゴーサインの基準値ですが、暴力描写に対するリスクとリターンのバランスを測った結果、企画が具体化することなく棚上げされたのが実態です。